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本店移転

本店移転とは

会社設立後に本店住所を変えることができる

会社設立時に、本店所在場所として会社の住所を決定し、それが登記事項証明書にも記載されます。しかし、会社を運営していく中で、例えばオフィスを移転したい、これまで自宅をオフィスにしていたけれど、新しくオフィスを借りてそこで会社を経営したい、というように、本店の住所が変わることもあります。その場合、本店住所の変更、いわゆる「本店移転」の手続きを行う必要があります。

 

オフィスの移転=本店移転、ではない

例えば、これまで自宅をオフィスにして、本店住所も置いていたけれど、新しくオフィスを借りて、「そこでも」業務を行う場合、本店の住所は、自宅のままとしても、新しいオフィスとしても問題ありません。本店は、会社としての営業を行う場所、と考えて差し支えないため、メインとして使うオフィスにしなければならない、などといった決まりはありません。

また、名刺やホームページに記載する会社の住所と、本店の住所が異なっていても問題ありません。ホームページに東京の住所が記載されている会社の本店が、実は北海道だった、ということもあります。

 

本店住所の決め方

自宅を本店とする場合

持ち家であれば全く問題ありませんが、ご自宅が賃貸物件である場合、必ず賃貸借契約書を確認することをお勧めします。賃貸物件の場合、居住目的の利用に限られることが多く、「登記不可」となっていることもあるからです。

賃貸物件の場合でも、本店住所を自宅とするにあたって、登記手続き上は大家さんや管理人の方等に承諾書、同意書のようなものを提出いただく必要はありません。ですが、登記不可という契約になっているのに登記をしてしまった、登記前に承諾書を出さないといけないのに出さなかった、といったことで、自宅住所へ本店移転の手続きを行った後に、再度別の場所に本店移転をしなければならなかった例もあります。

そのため、賃貸物件の場合は契約書の確認をし、仮に登記不可との文言がなかったとしても、大家さんへの確認をしておいた方が確実です。

 

レンタルオフィスを本店とする場合

レンタルオフィスでも登記可否が分かれていることがあるので、本店住所を置く前提でのレンタルオフィスの契約をするようであれば、事前の確認をお勧めします。

また登記可のレンタルオフィス場合でも、登記する住所の表記や登記可能となる日程が指定されている場合もありますので、こちらも確認をした方がよいでしょう。

 

バーチャルオフィスを本店とする場合

事務所としての場所はないけれど、住所だけを貸す、いわゆる「バーチャルオフィス」がここ数年、増えています。オフィスを持たない、ノマドワーカーの方々の利用が増えており、また昨今のコロナによるリモートワークの増加に伴い、レンタルオフィスを解約して、バーチャルオフィスへと移行される方もいるようです。

バーチャルオフィスの場合も、前述のレンタルオフィス同様、登記可となっていれば、本店移転の登記手続きを行うことは可能です。

ただし最近、バーチャルオフィスの住所を本店とすると、設立時に銀行口座の開設ができない、融資が下りないなどといった「金融機関の与信」に影響がでることがあるようです。

金融機関側としては、会社の本店住所はあるけれど、「本店がない」という状態が、しっかりと営業活動を行っていない可能性がある、という評価に結びついてしまうようです。

そのため、バーチャルオフィスを本店住所とする際は、きちんと金融機関に事情を説明したうえでの移転とするなどといった根回しをしてからの手続きとした方が、より安全に手続きができるでしょう。

 

本店移転の手続き

手続きの内容を判断する必要がある

本店移転の手続きは、本店の移転元と移転先により、大きく内容が変わってきます。

判断基準としては、次の2つです。

①法務局の管轄が変わるかどうか

会社は、本店の住所により、担当する法務局(=管轄の法務局)が決まっています。

基本的に各都道府県1つにつき1法務局が管轄となりますが、神奈川や大阪、福岡等会社の数が多い都道府県は、法務局が2つに分かれていたり、東京の特別区に至っては、1つの区に対して1つの法務局、というような分け方となっています。

この管轄の法務局が変更となるか、ならないか、によって、必要書類や手続き期間、費用が変わってきます。

法務局のホームページに、その法務局が管轄している場所がすべて記載されているので、本店移転の手続き前に、今の本店住所を管轄している法務局はどこなのか、そして移転先の本店住所を管轄している法務局はどこなのか、を確認する必要があります。

なお、おおよそ、ということであれば、

・東京都は区ごとに法務局がある

・大阪、愛知、神奈川、北海道、福岡のように会社数が多いか、広い都道府県は2つ以上  

に分かれている

・そのほかの都道府県は、1つずつ法務局がある

とお考え下さい。

②最小行政区画が変わるかどうか

定款には、本店の所在場所として「最小行政区画」までを記載すればよいこととなっています。最小行政区画、と言われるとわかりづらいかもしれませんが、いわゆる「市区町村単位」のことを指します。(この場合の「区」は、東京23区のみを指し、政令指定都市の「区」は含みません。)

ですので、もしこの最小行政区画が変更となる本店移転の場合は、定款変更が必要となり、逆に変更とならない場合は、定款の内容はそのまま、本店の住所だけを変更することとなります。

例:東京都港区⇒東京都港区 定款変更不要、本店移転のみ

    東京都港区⇒東京都千代田区 定款変更と本店移転が必要

  京都市上京区⇒京都市東山区 定款変更不要、本店移転のみ

  千葉県松戸市⇒千葉県八街市 定款変更と本店移転が必要

 

なお、①管轄法務局が変わるかどうかと②最小行政区画が変わるかどうか、は必ずしも一致しません。例えば前述の「京都市上京区⇒京都市東山区」と「千葉県松戸市⇒千葉県八街市」の場合、どちらも①管轄法務局は変わりませんが、②最小行政区画は、千葉県の場合のみ、変わります。

 

手続きの流れ

本店移転手続きの場合、以下のような手続きが必要となります。

・最小行政区画の変更により、定款変更が必要な場合は、株主総会の決議で定款変更を行い、株主総会議事録を作成する。

・実際の本店住所と本店の移転日を取締役会の決議(取締役会非設置の場合は、取締役の決定)で決め、取締役会議事録(取締役会非設置の場合は、取締役の決定書)を作成する。

・その他、司法書士に依頼をする場合は委任状等も作成し、申請書と合わせて「現在の本店住所を管轄する法務局」に、登記を申請する。

管轄をする法務局が変わる場合、新しい本店住所を管轄する法務局にも登記を申請する必要がありますが、この申請は、現在の本店住所を管轄する法務局を経由して行うこととなります。そのため、新しい本店住所を管轄する法務局に登記申請を直接行うことはありません。

なお、登記申請にあたっての登録免許税は、1法務局あたり3万円、になります。つまり、管轄をする法務局が変わらない場合は3万円、変わる場合は倍の6万円、となります。