組織変更
組織変更とは
株式会社が持分会社(合名会社、合資会社又は合同会社)へ会社形態を変更すること、あるいは逆に持分会社が株式会社へと会社形態を変更することをいいます。
組織変更の目的
なぜ組織変更をするのか
設立から時間が経つにつれ、事業の拡大・縮小や会社の経営状況の変化などにより、当初の会社形態が、会社の現状に合わなくなることがあります。そんな時、いったん会社を解散し、一から会社を設立するのではなく、法人格は同一のまま会社の組織形態のみを変更することができます。
組織変更の種類
組織変更は、大きく分けて以下の2つの手続きのどちらかとなります。
・持分会社から株式会社へ
持分会社は、所有と経営が分離されていない(=出資者と役員が同じ)会社形態です。したがって、出資をした者が社員として会社の経営にかかわる必要がでてきます。そのため、投資家等、外部から大きく資金を集めることに向いていません。資金を広く集め、事業を拡大しようと思ったときは、株式会社へ組織変更するとよいでしょう。
また、持分会社はまだまだ社会的な認知度が低く、株式会社と比べて取引相手としての信用度が劣る一面があります。対外的な信用度を上げたいと考えたとき、組織変更は一つの手段として考えられます。
・株式会社から持分会社へ
上記のようなデメリットの反面、持分会社は所有者=経営者であるため、迅速な意思決定が可能となります。株式会社は出資額に応じて保有する株式1株あたり1議決権が原則となっていますが、持分会社の場合、定款の規定を調整すると、出資金額の割合によらない議決権(決定権)を設定することも可能ですので、そういった意味でも経営における意思決定を迅速に行うことができます。
また、株式会社と異なり、持分会社には役員の任期がないため、任期のたびに役員の重任登記をする必要がなく、ランニングコストという点で優れています。会社運営にあたり、経費を抑え、省エネな経営を行いたいと考えたとき、持分会社への組織変更は一つの手段となるでしょう。
新規設立と組織変更の違い
今ある株式会社や持分会社を休眠あるいは解散させて、新しく持分会社や株式会社を設立しても、最終的には組織変更と同じ形となります。
新規設立ではなく組織変更を選択するポイントとしては以下の3点があります。
・今ある会社の変更となるので、許認可等を引き継ぐことができる。
例えば、建設業の許可は、組織変更の場合は変更届の提出で足り、新規取得は不要です。
※許認可の種類によっては引き継げないこともあるので、都度確認は必要です。
・会社の設立日がリセットされない
登記事項証明書に記載のある「会社成立の年月日」は、組織変更をした後も、組織変更前の会社が成立した日のままとなります。つまり、「新規の法人」ではなく、古くからある会社、としてその後も運営をしていくことができます。
・株式会社への変更の場合、手続き費用を抑えることができる
株式会社の新規設立の場合、定款認証費用も合わせて約20万円程度の実費が必要となりますが、組織変更の場合、実費は最低10万円程度となります。
ただし、逆に組織変更手続きの場合、債権者保護手続きを経る必要があるため、
・債権者に個別に通知をしなければならない
・通知や官報への公告掲載から1か月以上、時間を置かないといけない
というデメリットもあります。
そのため、これらを総合的に検討して、判断する必要があります。
組織変更の具体的な手続き
手続きの流れ
組織変更のうち、特に多い「持分会社から株式会社への組織変更」の手続きについて以下にご説明します。
①組織変更計画書の作成
持分会社が組織変更をして株式会社となるには、組織変更計画書を作成しなければなりません(会社法743条)。組織変更計画書には、最低限、次の事項を定める必要があります(会社法746条)。
・組織変更後の株式会社の目的、商号、本店の所在地及び発行可能株式総数
・組織変更後の株式会社の定款で定める事項
・組織変更後の株式会社の役員の氏名又は名称
・合同会社の社員が取得する株式の数、種類又はその数の算定方法並びにこれらの株式の割当てに関する事項
・合同会社の社員に金銭等を交付するときは当該金銭等に関する事項
・効力発生日
なお、組織変更後の株式会社の概要は、この組織変更計画において自由に設定することができるので、商号や役員、事業目的を、変更前の持分会社と全く違うものに変えても問題ありません。
ただし、以下の2点は持分会社と同様とする必要がありますので、注意が必要です。
(1)本店住所
組織変更にあたり、商号と本店が同時に変わってしまうと、会社としての同一性が登記手続き上、保てなくなってしまうためです。本店移転も行いたい場合は、組織変更手続きの前後どちらかで行う必要があります。
(2)株主(出資者)
株式会社への変更にあたり、その株式会社の株式を発行しますが、この株式を受け取って株主となることができるのは、持分会社の社員(出資者)となります。基本的には出資額に応じて株式を割り当てます。
②総社員の同意
持分会社は、組織変更計画について、計画書中に定めた効力発生日の前日までに、総社員の同意を得なければなりません。(法781条)
③債権者保護手続き
組織変更をする持分会社の債権者は、当該持分会社に対し、組織変更について異議を述べることができます(会社法779条、781条)。また、組織変更をする持分会社は、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければなりません。
・組織変更をする旨
・債権者が一定の期間内(1か月以上)に異議を述べることができる旨
ただし、合同会社が官報のほか、定款の定めに従い、時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法又は電子公告の方法により公告をするときは、債権者への各別の催告を省略することができます。
④効力発生
持分会社は組織変更計画で定めた効力発生日に株式会社となります(会社法747条)。
⑤法務局への登記申請
持分会社が株式会社へ組織変更を行ったときは、本店の所在地を管轄する法務局に、組織変更計画書に定めた効力発生日から2週間以内に持分会社の解散登記及び株式会社の設立登記を申請しなければなりません。これらはいずれも設立する株式会社の代表から申請することを要します。
手続き費用
・登録免許税
最低で6万円の登録免許税が発生します。
上記⑤にある通り、組織変更の登記手続きは、「持分会社の解散登記」と「株式会社の設立登記」という形式になります。
このうち、株式会社の設立、に係る登録免許税額は、組織変更前の持分会社の資本金額の0.15%です。ただし、登録免許税法施行規則に規定する額を超過する部分については0.7%となります。なお、この計算式で計算した結果の税額が3万円未満のときは、一律3万円です(一般的な中小企業であれば、3万円となる会社がほとんど、という実情もあります)。
合同会社の解散については、一律3万円となりますので、合計すると最低額6万円、となります。
・官報公告費用
上記③に記載のある債権者保護手続きにあたって、官報へ公告を掲載する必要があります。会社概要により費用が異なりますが、概ね3~4万円程度の実費が発生します。